にわかログ

16年来のジャニオタがある日突然Snow Manに転がり落ちてからの日々を綴るTwitterにて呟いた長文アーカイブ用のブログ

映画『モエカレはオレンジ色』感想

事前知識は、原作1話を試し読みしたのみ。映画を鑑賞後、原作単行本を現在発売中の最新刊(13巻)まで読み、もう1回映画を鑑賞した後の感想です。

ちなみに、映画としては岩本くんが主演だけど「少女漫画原作をジャニーズ主演で映画化する時のパターンで、事実上の主人公は原作通りだろう」という認識で、最初から萌衣ちゃんを主人公として映画を観ております。

 

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映画『モエカレはオレンジ色』を最初に鑑賞しての感想は、面白かったし後味が良いということでした。映画だけを観ても内容を充分理解できるし、登場人物が誤解やすれ違いでごちゃごちゃすることなく物語が展開していくのも観やすいなと感じました。

少女漫画では女子高校生と大人の男性が恋愛する展開は珍しくないけれど、それを実写化すると「大人に憧れる女子高生は可愛いけど、男性側がそれに応えるのは大人としてどうなの?」という感じがリアルになってしまう気がするんですが、映画の蛯原さんの《萌衣の母親にスーツ姿で挨拶に行く》《学校を卒業するまではダメだと線を引く》という姿勢は大人として誠実だと感じました。「こういうちゃんとした人だから萌衣ちゃんが好きになるのも分かるな」という説得力があったように思います。


2時間弱の映画でヒロインに好意を持つ男性キャラが3人も登場するのは詰め込み過ぎのようにも感じたのですが、これは漫画原作だから人気キャラを出さない訳にはいかないという事情もあるのかなぁと推察しました。

しかし、ヒロインに好意を持つキャラクターが何人登場したところで、萌衣ちゃん自身は蛯原さんしか見ていないので「どっちを選ぶの?!」というハラハラ展開には一切ならないところがとても良かったです。
恋に対しても夢に対しても、誰に何を言われても自分で選んだものから揺るがないのが萌衣ちゃんの魅力だなと思うので。


そういう「良いな」と感じた部分が、映画オリジナルの展開なのか、それとも原作を忠実に再現したものなのかが気になって、映画鑑賞後に原作を読んでみることにしました。


原作を読むと、若干の設定変更が確認できたのですが、萌衣ちゃんの学年に関しては映画の設定の方がしっくりきました。

原作だと中3の冬に父親が亡くなって高1の春に母親の故郷に引っ越してきたことになっているけど、「それなら入学のタイミングで母親の故郷に来れば良かったのでは?」って思ってしまって。でも映画だと萌衣ちゃんは2年生の設定なので(教室前のシーンで『2-1』とクラス表示がありました)、高1の冬に父親が亡くなったなら新学期始まって間もないタイミングでの転校も納得できるなと感じました。

「卒業するまでダメだ」というのも、卒業まで1年半を切っている2年の冬に言われたら待てるけど、1年生でそれを言われたら「この間入学したばっかりなのに卒業なんてずっと先だよ!」って気持ちになりそうだし。


また、原作単行本を読むと実際の消防署に取材に行かれた上でのプチ情報を作者コメントに書いて下さっていて、映画を観て思った「バーベキューの時も誕生会の時も、こんなにみんな揃って休みを合わせられるものなの?」という疑問も解消されました。

消防士さんは基本的に1日置きの24時間勤務ということで、第2小隊のみんなは常に同じ時間に仕事をして同じ時間に休んでいるから、あのシーンでみんな揃っているのは自然なことなのねと。


原作では最初は第1小隊に配属されたけど途中から第2小隊に異動する姫野さんが映画だとずっと第1小隊所属だから、原作踏まえて2回目観ると「何で姫野さんはこの日非番じゃないはずなのにわざわざ面識の無い女子高生の誕生会に来たんだろう?」とか「このシーン、第2小隊が勤務に当たってるってことは姫野さん休みのはずなのに何でずっと消防署に居るんだろう? ワーカーホリックなの?」みたいな気持ちにはなりました。(笑)

姫野さんに関しては、原作では第2小隊異動後のエピソードを第1小隊所属として描かなきゃいけないからこうならざるを得ないんだなぁと思いますが。別に矛盾するほどのことでは無いしまあいいや。


そう言えば、映画化の情報を知った時に「蛯原さんのビジュアルを原作に寄せるつもりが無さそうだけどそれで良いのかな?」と思ったのですが、作者コメントによると原作の蛯原さんの前髪は「少女漫画なので許して下さい」ということなので、実写化にあたって『原作に寄せる』よりも『実際の消防士に寄せる』というビジュアル設定を選んだんだろうなと解釈しました。うん、確かにその方が実写としてリアリティがあります。


漫画原作の実写化は全てのエピソードを再現することはできないので、どのエピソードを選びどういう順番で構成するかが重要だと思っています。
原作をそのままなぞるのではなくて、原作エピソードの取捨選択と構成および原作の世界観を損なわないオリジナルエピソードをいかに時間内にまとめられるかが、漫画原作の実写映画化の成否を分けるポイントかと。

そういう点で考えた時に、映画『モエカレはオレンジ色』はいい実写化映画だなと私は感じました。

(私が初見で「いいな」と思った蛯原さんがスーツで挨拶に来るシーンは原作には無いシーンなんだけど、あれはまさに『原作の世界観を損なわないオリジナルエピソード』でした。初見では蛯原さんの誠実なキャラクター性を感じたし、原作を知った上で観ると「蛯原さんならこのくらいやりそう」という納得感がありました)

 

この映画のキャッチフレーズの一つに「守ってくれる人を好きになりました」というのがあるけれど、映画と原作に触れて思ったのは「守ってくれる人を好きになりました」よりも「守ってくれた人を好きになりました」の方がしっくりくるなということです。
「守ってくれる人を」だと萌衣ちゃんは「これからもずっと蛯原さんに守られたい」と思っているようだけど、「守ってくれた人を」だと「好きになったきっかけは守ってくれたからだけど、守ってくれる人だから好きな訳じゃない」という意味になるからです。

強い大人に守られることで安心感を得て依存するのではなくて、「自分も大切な人を守りたい」と思えるのが萌衣ちゃんの魅力でありこの作品の魅力でもあると思います。

それで言うと、むしろ蛯原さんの方が「お前は俺に守られておけばいい」と頭ごなしに言って、萌衣ちゃんの「私だって蛯原さんを守りたい」という気持ちを尊重してくれないところが子供だなとも感じました。
救命士を志す萌衣ちゃんへの原作蛯原さんの反対っぷりが印象に残り過ぎて、2回目の映画鑑賞時に「映画の蛯原さんはこのくらいで納得したから原作よりは大人だ~」と思ってしまいました。(笑)


この映画の主題歌はSnow Manの『オレンジkiss』です。
1回目の映画鑑賞時にエンディングでこの曲を聴いた時は、「これは蛯原さん目線の歌詞なのか、それとも萌衣ちゃん目線の歌詞なのか、はたまたその両方なのか」ということが気になりました。フルサイズで『オレンジkiss』を聴いたのはこの時が初めてだったので、言葉の意味を全部追えた訳でもなく、その時には結論は出ませんでした。

しかし2回目鑑賞する時には「この曲は萌衣ちゃんの歌だ」と思って聴いていました。
「辛い時に君を思い出すとがんばれてしまう」のは萌衣ちゃんも蛯原さんもきっとそうなんだけど、「どうか君も、そうであってくれますように」と思えるのは萌衣ちゃんだから。

映画のエンディングでは萌衣ちゃんが高校卒業の日を迎えているけど、もしかしたらその直前のシーンから萌衣ちゃんの卒業までの約1年で蛯原さんも『オレンジkiss』の歌詞のように(彼女のことを一方的に守るだけじゃなくて)共に歩んでいくことを願えるような、そういう恋ができるように成長しているという解釈もできるかもしれません。